『それは、大人の事情。』【完】

「明日から沙織のお弁当作り、頼んでもいいか?」

「ヤダ、そんな顔しないでよ。自信ないけど、頑張ってみるから」


真司さんが安堵の表情で微笑んでる。そんな彼を見て、真司さんや沙織ちゃんの役に立てるんだと思い嬉しくなる。


「あ、そうだ。沙織ちゃんにプリン買ってきたんだけど、リビングに居るの?」


冷蔵庫を開けようとした私の手を後ろから伸びてきた真司さんの手が制止した。


「いや、なんか疲れたみたいでテレビ観ながら寝ちゃったよ」

「そう、寝ちゃったのか……せっかく一緒に食べようと思って急いで帰った来たのに……残念」


リビンクに続くドアを見つめため息を付くと、真司さんが私の体を冷蔵庫に押し付け小声で囁く。


「俺も食いたいんだけどな……」

「えっ?真司もプリン食べたかったの?」

「バカ……俺が食いたいのはプリンじゃない。梢恵だよ」


耳をくすぐる甘い声と妖艶な眼差し。優しく触れる唇はとても熱い―――でも……


「沙織ちゃんが居るのに……」

「大丈夫だ。よく寝てるよ」


それでもやっぱり沙織ちゃんの事が気掛かりで、腰を引き眉を寄せると、啄む様な優しかったキスは一変、貪る様な荒々しいキスに変わっていった。


閉じていた唇は彼の硬い舌にこじ開けられ、私の口内を我がモノにする。そうなってしまったら、もう真司さんを拒む事など出来ない。


スカートをたくし上げ内股を撫でるイジワルな指に、私の体は素直に反応していた。


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