あの頃のように笑いあえたら
東京駅から新幹線に乗る。

スキー客で賑わう中、なんとか席を確保して一安心だ。
1人で新幹線に乗るなんて、もちろん初めてのことだった。

周りのみんなには仲間がいて、1人取り残されたようで不安になる。

騒がしさをシャットアウトするためイヤホンで音楽を聴くと、高まる鼓動も少しおさまってきた。

車窓を流れる景色をぼんやりと眺める。


ーー今朝、またあの夢を見た。


あの、森の夢。

私を導く小さな手は、源だったんだ。

私にとってあの夢は、けっして楽しいものではない、どちらかとかと言えば苦しいものだった。

でも、この夢を見るのもきっと今日で最後だろう。

源の気持ちはどうあれ、私の気持ちは源に伝えるつもりだ。

私の片想いは、もうすぐ終わる。寂しいけれど、想いを伝えるのは今しかない。

私はずっと、源の夢を見ていたのだ。
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