あの頃のように笑いあえたら
長野駅からはバスに乗り、20分ほどでおばあちゃん家に着く。

小さい頃から何度も来ているので、迷うことはない。

駅前にはほとんど雪はなく、おばあちゃんの家の付近も平地だからかそれほど積もらない。

それでも、東京とは比べ物にならないほど寒い。

持ってきた白いニット帽を被ると、ホッとため息が出る。

もしかして駅で源に会うかと思っていたけれど、その姿は見えない。

10分ほどでバスはやってきた。

スキー客で賑わっていた新幹線とは違い、地元の人しか乗らないバスは空いていた。

窓の外の景色は見慣れているけれど、やはり1人きりなのは心許ない。

もちろん源に会えるかどうかの不安もある。

会えなくても、それでいい。なんて思ってはいるけど……やっぱり会って話がしたい、気持ちを伝えたい。

暖房が効いている車内。ニット帽を脱いで、髪を整える。
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