あの頃のように笑いあえたら
渋滞もない田舎道を走るバスは、予定通りにおばあちゃん家の近くのバス停に到着した。

ステップを降りバスを見送ると、深く、深く深呼吸をした。

冷たい空気を吸い込むと体も頭もシャキッとする。

ーー よし、行こう。

人通りのない細い道を1人歩き始める。源のことだけを、考えながら。

森へ行く途中にあるおばあちゃん家の前で一度立ち止まり、垣根から中を覗いてみる。

夏に取り壊された家屋は跡形もなく、雑草が伸びた広場のようだった。

ー ーこんなに広かったんだ。

かつてこの庭で源と2人で撮った写真を思い出し、寂しさが込み上げる。
源と語る思い出の場所の一つは、もう姿を変えてしまっているのだ。

思い出の森に近づくと、さすがにドキドキしてきた。

時計を見ると11時少し前……源はもう来ているだろうか。

私を見て、驚くだろうか。いったいどんな顔をするんだろう。

森の入り口へと、一歩足を踏み入れる。
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