あの頃のように笑いあえたら
深呼吸をし、冷たい空気を吸い込む。
頭はまだ真っ白なままだった。

「……なあ、いとな」

黙って池を眺めていた源が、急に私の方を向いたからドキッとした。

「なに?」

少し強い風が吹いて、木々が揺れる音が2人を包み込む。

私は、なびいた髪を押さえながら源を見つめる。

「……オレ、ずっと……いとなが好きだったんだ」

緊張した表情の彼の口から出た言葉は、ずっとずっと私が伝えたかった言葉。そして聞きたかった言葉だった。

「え……?」

照れ屋な源が、私の目をしっかりと見つめている。

「……オレと、付き合ってくれないかな」

いつもよりも、もっと優しく柔らかい声が、私の胸の奥に届く。

真っ白な私の胸に、見たことのないキレイな色がそっと落とされ、あっという間に身体中を染める。

そして言いたい言葉より先に、その感じたことのない感情が涙となって溢れ出ていた。

「うんっ……うん。」

そう、頷くのが精一杯だった。

ずるいよ、私が言おうとしてたのに。

私も伝えなきゃ、言わなきゃ。そう必死に思っていると、不意に源が私の肩を優しく引き寄せ抱きしめてくれた。

暖かい源の胸……私の背中を包むたくましい腕。
ああ、そうだ。ずっとこうしたかったんだ。
< 223 / 231 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop