あの頃のように笑いあえたら
「でも……来て、よかった」

源の胸から少しだけ顔を起こすと、ひんやりとした空気が濡れた頬に触れる。

「うん」

源も、私の背中から腕を離し顔を上げる。

いつもの、穏やかな表情。

「寒くないか?」
「うん、大丈夫」

私は泣いた顔を隠すように、カバンからブランケットを取り出して私と源の肩にかけ、2人を包めるように少し源に近づく。

「お母さんの法事、どうだった?」

「うん、無事終わったよ」

「そっか……」
源の穏やかな表情を見れば、分かる。

「父さんとも話ししたよ。サッカーやりたいって言ったら、オレの好きなこと何でもやれって言ってくれた。」

いつものように、ゆっくり言葉を選ぶ。

「うん」

ーーよかった 。
やっぱり源のお父さんは優しい人だった。

源が少し勇気を出せたことを考えると、やっと渇いてきた涙がまた溢れそうになり、慌てて下を向く。

前へと進んでいる源が少したくましく見える。

「泣き虫だな、いとちゃんは」

肩の触れる距離にいる源が、うつむいた私の顔を覗き込む。

「もー!嬉し泣きはいいんだもん」

もう泣き顔を見られるのがイヤだから、頑張って堪える。

そんな私を見て、笑って背中を撫でてくれる人が、ここにいる。
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