あの頃のように笑いあえたら
「な、飯食った?」
「ううん、まだ」

そういえば、緊張感がとれたからかお腹が空いてきた。

「腹減った、なんか食おう」
「はは、うん。でも撮影は?」

ここに来てから源はまだ1度もシャッターを押してない。

「飯が先だ。なんかあったかいもん食いたい」

「じゃ、行こうか」

ふふ、子供みたいな可愛い源。

確か、近くにおそば屋さんがあったな。

2人同時に立ち上がると、あの頃と同じように源が私に手を差し伸べてくる。

細く長い指は、幼い頃から変わっていない。

私はまだ胸がいっぱいのまま、その手に触れる。

ああ、やっぱり少しあったかい。

寒さで冷えた手から、優しさと温もりが伝わってきて、身体中からまた何かが溢れてきそうになった。

源を見上げると、少し照れた顔で私を見て微笑んでいる。

源が、ここにいる。私だけを、見ている ーー
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