柴犬~相澤くんの物語り
 やっと高宮さんに会えたと思ったのに、次の日もその次の日も彼は来なかった。

 散歩コースも変えられてしまったのか、姿を見ることも出来なくなった。

 もうここには来るなと言われたのは確実だ。


 二度と前みたいに遊べないのかな……

 そう思うと胸が締め付けられるみたいに苦しい。
 ボーッと庭に寝そべっていたら、隣家の三階の窓に人影ならぬ犬影が!
 高宮さんだ。
 
 必死で窓にへばりつき、おれのいる犬小屋を見下ろしている。
おれが顔を上げ視線が合うと、パッと満面の笑みを浮かべた高宮さんが、ワンと吠えた。

 久しぶりに見るお互いの姿に嬉しくてワンワン吠え合っていたら、ございますおばさんがやってきて、高宮さんを窓から引き離し、どこかへ連れて行ってしまった。
それでも彼は、隙をついては、窓から顔を現す。


 見つからないようにもう吠えるのはやめておれたちは互いに黙って見つめ合う。
 
 まるで現代版ロミオとジュリエットだぞ……

ただし、雄同士だけど……。


 でも、そんなささやかな幸せの時間も長くは続かなかった。

たびたび覗いているのがばれたのか、ついに窓のカーテンが閉めっぱなしになってしまい、高宮さんがその窓から顔を覗かせることは二度となくなってしまった。



本当にもう会えないのかな……。

 もう一度、キャッチボールしたいな……。



 悲しくて涙が出てくる。何日も泣きながら過ごした。

  
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