柴犬~相澤くんの物語り
次の夜もおれたちは、食べ物を求め同じ場所に顔を出した。
他に効率的に食料を手にいれる方法を思いつかなかったんだ。


一緒に行くという高宮さんを説き伏せ、ちょっと怖かったけど、おれだけ、いつもの路地裏に向かう。


 昨日殴られた中華料理店の前は体を低くし這うように通る。
ポリバケツの蓋には大きな石の重しが載せてあって、もうおれの力では開けられそうになかった。


結構この店の料理はうまかったのに残念だ。


そう思いつつ通り過ぎようとしたら、裏口のドア付近にスーパーの袋が置いてあるのに気づいた。


とてもいい匂いがする。

そっと中をのぞくといろんなおかずがきれいに分けて入れられていた。

持って帰っていいのかな?
 でもオヤジの罠か?
もしかしたら、毒でもはいってんのか?


 袋に顔を突っ込んで、ふんふん匂いを嗅いでいると、裏口のドアがカチャッと開いておれは身構えた。



中から昨日おれたちを助けてくれたおばさんが出てきた。

 「持って帰っていいよ、あんたたちのだ。ここなら、だんなも気づかないだろうから、毎日なにか置いといてやるよ。取りにおいで」



 ありがたい申し出だった。


礼のつもりで、おばさんの手をぺろっと舐めて、袋をくわえると、その場を走り去った。

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