柴犬~相澤くんの物語り
 昼間はなんとなく気が紛れても夜になると淋しくて仕方なくなった。


 高宮さんと一緒だと全然気にならなかったピューピューいう風の音が怖い。

我慢して目を瞑ってもなかなか寝付けない。

だんだん彼のお腹の温かいベッドが恋しくなってきた。
涙が出そうになるのを歯をくいしばって堪える。
どこに体を置いても胸が苦しくて、うーうー唸りながら地面をゴロゴロ転がる。

あんなこと言わなきゃよかったという思いと、このほうが彼のためなんだという思いが交互にやってきて、心が乱れる。



高宮さんの匂いが小屋の中から少しずつ消えていくのが身がちぎれるほどに悲しくて、毛布に顔をうずめ朝を迎えた。

 
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