柴犬~相澤くんの物語り
土砂降りになった雨の中、おれはもと来た道を全速力で駆け戻る。
小屋の中にはやっぱりいない。
再び雨の中を飛び出し、心当たりを死に物狂いで走り回る。
一緒にボール遊びした河原、かくれんぼした空き地、食べ物を求めさまよった繁華街……
こんなに激しい雨では、高市さんの匂いもかき消され、おれの嗅覚はまるで役にたたなかった。
何時間も捜し回り、くたくたに疲れ果てた頃、何気なく入った公園の隅っこにボロ布みたいになって倒れている高宮さんをやっと見つけた。
「高宮さん?!」
慌てて駆け寄る。
「どうして……?」
涙があふれた。
せめて雨のかからないところにと彼の背中をくわえ引きずろうとしたけどおれの力では動かせなかった。
近くの休憩所みたいな建物の中からゴミ捨て用のビニール袋を取ってきて彼の体に被せる。
鼻先を近付け、キュンキュン鳴いて呼びかけたけど、何も答えてくれない。
おれは広げたビニール袋の下に潜り込んで高宮さんの体を温めようと、いつもしてたみたいに彼のお腹にぴったりくっついた。
普段温かい体は氷みたいに冷たくて、また涙がでてくる。
でもおれにできることは、このくらいしかなかった。
高宮さん、死なないで……祈り続けた。
小屋の中にはやっぱりいない。
再び雨の中を飛び出し、心当たりを死に物狂いで走り回る。
一緒にボール遊びした河原、かくれんぼした空き地、食べ物を求めさまよった繁華街……
こんなに激しい雨では、高市さんの匂いもかき消され、おれの嗅覚はまるで役にたたなかった。
何時間も捜し回り、くたくたに疲れ果てた頃、何気なく入った公園の隅っこにボロ布みたいになって倒れている高宮さんをやっと見つけた。
「高宮さん?!」
慌てて駆け寄る。
「どうして……?」
涙があふれた。
せめて雨のかからないところにと彼の背中をくわえ引きずろうとしたけどおれの力では動かせなかった。
近くの休憩所みたいな建物の中からゴミ捨て用のビニール袋を取ってきて彼の体に被せる。
鼻先を近付け、キュンキュン鳴いて呼びかけたけど、何も答えてくれない。
おれは広げたビニール袋の下に潜り込んで高宮さんの体を温めようと、いつもしてたみたいに彼のお腹にぴったりくっついた。
普段温かい体は氷みたいに冷たくて、また涙がでてくる。
でもおれにできることは、このくらいしかなかった。
高宮さん、死なないで……祈り続けた。