柴犬~相澤くんの物語り
 冷たかった高宮さんの体がほんの少し温かくなった気がした時、彼が包み込むみたいにおれを抱き締めた。



 「高宮さん、わかる? こうただよ?」

 おれは高宮さんに抱き締められたまま、もこもこと向きをかえ彼の顔を覗き込んだ。

微かに目を開けた彼がおれの鼻をペロッと舐め、再び目を閉じる。




 いつの間にか雨は止んでいた。



少しずつ温もりのもどってくる彼の体にすっぽりと覆われ、おれも安心して目を閉じた。

 
< 56 / 84 >

この作品をシェア

pagetop