不倫のルール
「ありがとう、繭ちゃん。俺の仕事が評価されたのは、素直に嬉しい。……ただ……」

短く息を吐いた後、柴田さんは言った。

「毎週会うのは、無理だと思う」

……うん、そうだよね……柴田さんが転勤になる支社がある町まで、高速道路を利用しても二時間はかかる。“遠距離”という程の距離ではないが、同じ市内に住んでいた今までのようにはいかない。

今までは、実家暮らしだった柴田さん。転勤となったら、一人暮らしになるだろう。当然家事も、自分でしなければいけなくなる。

慣れない場所で、新しい仕事を始めるのだ。普段以上に疲れるだろう。お休みは身体を休めたいと思っても、なかなか……

「……ちゃん!繭ちゃん!」

頭の中で、グルグルと一人で考えていたら、柴田さんに名前を呼ばれハッ!とする。

「言っとくけど、俺まだ繭ちゃんの事、嫌いになってないから!」

「……はい」

忘れていた。そうだった……最近では、柴田さんに促されなくても、行きたい場所、食べたい物等々……自分から言う事も増えていた。

「メールする。電話もする。毎週は無理だけど、会いにも来る!だから繭ちゃんは、きちんと最後まで責任持って、俺にわがままを言う事!」

柴田さんのおかしな言い回しに、思わず笑ってしまった。柴田さんも、ホッとしたように笑った。

仕事の引き継ぎや引っ越しの準備があるので、三月はそれ以降、柴田さんとは会えなかった。

柴田さんの転勤の話を聞いてから数日経った頃、美冬が連絡してきてくれた。

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