不倫のルール
できるだけ明るい笑顔を、柴田さんに向ける。

「新しい出会いも、たくさんありますよね?そのうち、私なんかの事を嫌いにならなくても、柴田さんの心が動く出会いが、絶対にありますから!」

右手で拳を作り、柴田さんを見ながら大きく頷いた。

「……そう……なのかな……?」

柴田さんは、眉尻を下げて微笑んだ。

否定、しないんだ……

「はい!大丈夫です!」もう一度頷いて、ニッコリと笑った。

私、ちゃんと笑えていただろうか?ひきつった笑顔になっていなかった事を祈る。

それから、柴田さんが引っ越した町や、仕事の様子を聞いた。

自販機で買った缶コーヒーを、柴田さんの車の中で飲みながら話して、それで別れた。

ゴールデンウィークの柴田さんの一日休みは、今日だけになりそうだと、苦笑していた。

それでも別れる時、柴田さんらしい笑顔が見られて、少しだけホッとした。

柴田さんとは、もう会えないのかもしれない……そんな予感がしたけど、不思議と涙は出なかった。

そうならないように、柴田さんと付き合ってきた。

ただ、渇いた笑いが溢れるだけだ……



五月も終わりに近付いた頃。

夜、明奈から電話があった。「久しぶり!元気だった?」なんて話した後、明奈の言葉にびっくりした。

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