不倫のルール
「明奈」「ん?」「幸せ?」私の問いに、明奈はスッと息を吸った。

「すっご~~くっ!し・あ・わ・せ!!」

明奈は、満開の花のように笑っているのだろう。私も、心がほんわりと温かくなった。

「繭」「何?」「繭は、幸せ?」

言葉に詰まった。

「明奈、わからないよ……何がどうなったら、私は本当に幸せだと思えるのかな……」

私の独り言のような問いに、明奈は少し考えてから話し始めた。

「『都会のデキる女になる』事が目標だった私には、結婚や、ましてや妊娠なんて、以前は全く考えられなかった。だって、努力して手に入れたキャリアを、ドブに捨てるようなものでしょ?」

明奈らしいはっきりとした言葉に苦笑する。

「でも、加山君と一緒に過ごして、付き合うようになって……肩の力が抜けたと思ったら、なんだか楽に呼吸ができるようになってたの」

あっ……その感覚、私も柴田さんに感じていた。

「妊娠したとわかった時は、腰が抜ける程びっくりしたけど。加山君と二人で、これからの事を話して……『産む』以外の選択肢は、最初から私達にはなかったの」

「うん」スマホを握る手に、力が入った。

「二人で、田舎で暮らす事を決めたから、私達の仕事でのキャリアはなくなるけど、全然惜しいと思わない」

「まだ人の形にもなっていない、小さな小さな命だけど、愛しくて仕方ないのよ」

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