不倫のルール
明奈の声はとても穏やかだった。ああ……もう、“母親”になっているんだと感じた。

「繭。失う事を恐れて、何も求めなかったら、結局、何も得られないんじゃないのかな」

明奈の言葉は、私の中で、静かにゆっくりと広がっていった──



親友達の顔や言葉を思い浮かべながら、自分の心の中の奥底や、隅っこの方まで、ちゃんと見る。

“答え”のようなものが、見えてきたように感じていた時、黒崎さんから『明日、会わないか』とメールが届いた。

去年の十二月から先月五月まで、プライベートでは黒崎さんと会っていない。それでも、月に一度こんなメールが届いていた。まるで“義務”のように……

黒崎さんへの気持ちを確かめよう……それがはっきりしたら、きちんと私の“答え”を出そう……!

『待っています』ずっとそうだったように、一言だけ返信した。

黒崎さんと会えば、これからどうしたいのかわかるはず……!

「これ以上は無理!」て思うくらい考えて、黒崎さんと会う事を決めたはずなのに、いざとなると不安になる。

もし、自分の気持ちがわからなかったら……?そんな中途半端な状態で黒崎さんに迫られたら、私、流されずに対応できる?

今まで恋愛に関して、大きな決断を自分でした事がない。

そんな自分に、急に自信がなくなる。でも、ここでやめると、またズルズルと何も変えられないまま時間が過ぎそう……

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