不倫のルール
黒崎さんの舌が、私の口内に入ってきた時、身体の中から何かがせり上がってきた。

う"っ!気持ち悪い……吐きそう!!黒崎さんの胸を、両方の拳で強く叩く。

「繭子?」私の様子がおかしい事に気付いた黒崎さんが、唇を離した。

私は、トイレに走った。便器に顔を突っ込むようにして、おもいっきり戻した。

先程飲んだ栄養ドリンクを、全部吐いてしまったようだ。何度か咳き込んだ後、ようやく落ち着いた。

洗面所で口を濯ぐ。久々に、吐いた……結構、キツい!顔を上げて鏡を見ると、顔面蒼白の自分がいた。

……黒崎さんにキスをされて、吐きそうになった程、イヤだった訳ではない……

でも……これはやっぱり、黒崎さんへの“拒否反応”だ……!

居間へ戻ると、黒崎さんは立ったままだった。

「ごめんなさい。寝不足のせいか、ちょっと体調が悪くて……」

「繭子、顔色が悪いね」

黒崎さんは、右手で私の頬を包んだ。その手を避けるように、俯いた。

「……体調が悪いのなら、無理をしない方がいい。……今日は帰るよ」

顔を上げると、黒崎さんは優しく笑っていた。……黒崎さんに、きちんと「さよなら」を言おう……!

「ごめんなさい……あの!」

“最後”……そう思ったら、ずっと頭の隅にあった言葉が出てきた。

居間に掛けていたカレンダーをめくって、七月のある金曜日を指す。

「この日に、会えませんか?」

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