不倫のルール
涙が一筋、頬を伝った。それを、手の甲で拭う。

「“一人”は、イヤです!もう、一人で誕生日を迎えるのは、イヤなんです!……柴田さん、会いに来てください!今日中に、私に会いに来てください!!」

最後は、声が震えてしまった。泣いていた事、柴田さんに気付かれてしまったかもしれない。

「……わかったよ。繭ちゃんに会いに行くから、待ってて!」

通話が切れた。しばらく、スマホを耳に当てたままボーッとしていた。

……言っちゃった!柴田さんに「今日中に会いに来て!」なんて、言っちゃった……!!

私の本当の誕生日は、明日だ。黒崎さんには、本当の誕生日より一日早い日付を教えた。

誕生日に黒崎さんから何の連絡がなくても、自分に言い訳できるように……

私って、本当に小さいというか、悲しいというか、情けないというか……

別れを伝える為だったとはいえ、黒崎さんと会っていた後に、柴田さんを呼び出すなんて……

最初から“本当に会いたい人”を、考えればよかったのに……

スマホで今の時刻を見る。もうすぐ十時……柴田さんのいる町から、私のいる町まで二時間はかかるのに……

柴田さんが、すぐに出かけられる状態だったかもわからない。もしかしたら、まだ仕事をしていたかもしれない……

それなのに「今日中に会いに来て!」なんて……そもそも、柴田さんは私の家を知ってるの?ちゃんと話した事、あったっけ?

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