不倫のルール
美冬の叫びに、私は苦笑した。

「私には、黒崎さんがいるし。それに……私なんかじゃ、柴田さんに釣り合わないよ……」

「繭子、『私なんか』なんて言わないで!そりゃ、柴田さんは確かにカッコいいけど、繭子だって……」

必死に言ってくれる、美冬の言葉を遮る。

「私は、平気で不倫なんかしてる女だよ。……柴田さんには、もっとお似合いの人がいるよ……」

「繭子……」

自嘲気味に笑って言えば、美冬が悲しげに私の名前を呼んだ。

帰る間際、柴田さんは笑ってくれた。告白も軽い感じだったし、そんなに気にしていないのだろう。私なんかに断られると思っていなくて、びっくりしたぐらいだろう……

飲み会の回数は、減っちゃうのかな……

私が寂しく感じるのは、その事だけだ。

──そう思う事にした。



柴田さん達との飲み会から、ちょうど一週間後の土曜日。

午前九時過ぎ、美冬がうちに来た。

「今から、そっちに行ってもいい?」

突然スマホに連絡が入り、OKした。

本当は、午前中は掃除をしようと思っていたけど、なんとなく美冬の声から、緊迫感を感じたから。

二人分のアイスコーヒーを入れて、居間のテーブルに座った。

「繭子、あれから柴田さんと何か話した?」

「先週の飲み会以降、連絡とってないよ」

『柴田さん』の名前が出てくるとは思っていなかった。

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