不倫のルール
六十代くらいだろうか?少しふくよかなお店の女の人に言って、お店の中を見渡す。
お客さんは、四~五組くらいかな。

「瀬名ちゃん、ここ」

ボックス席のソファーに座って、片手を軽く挙げた柴田さんを、すぐに見付ける。

「今日は、突然にすみません」

柴田さんの向かいに座って、頭を下げた。

「いや……何、頼む?」

柴田さんにメニューを渡される。

「じゃあ……アイスレモンティーで」「了解」メニューにざっと目を通して、柴田さんにメニューを返しながら答えた。

おしぼりとお冷やを持って来たお店の人に、柴田さんが注文した。

「ここ、すぐにわかった?」「なんとか……」「……今日も暑いね」「ですね……」

どことなくぎこちない会話をしていたら、飲み物が運ばれてきた。

私の前にアイスレモンティー、柴田さんの前にはアイスコーヒーが置かれた。

グラスの縁に添えられていたレモンスライスをグラスに入れ、ストローでクルクルとかき混ぜる。

一口啜ると、レモンの酸味と紅茶の渋みが、妙に渇いた口内や喉を潤してくれる。

「えっと、ですね……」

「安井から連絡があった?……違うな。安井から言われた里中君に、俺と会うように言われた?」

私が無理して発した言葉に、被せ気味に柴田さんが言った。

「いや!……はい、そうです……」

否定しようとしたが、諦めてすぐに頷く。柴田さんと何をどう話すかなんて、全然思い付いていなかった。

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