不倫のルール
ニコニコ笑っていた柴田さんが、急に真剣な顔で言うので、なんとなく慌てた。

「べっ、べつにイヤではないですけどっ!」

「じゃあ、決めた!これからは名前で呼ぶ!」

「っ!……」

パッ!と表情を緩めた柴田さんに、とっさに言葉が出ない。

「俺の事も、賢……」

「『柴田さん』は『柴田さん』です!」

なぜ呼び方まで変わるのか、わからない。さっきは思わず了承してしまったが、ここは断固拒否する。

柴田さんは少しだけ肩を落としたが「まっ、いいか」と、すぐに気分を変えた。

「チケットを買おう」と、肩を押されるようにして歩き出す。

席が予約してあるので、チケットも待たずに購入できた。

「飲み物でも、買う?」という柴田さんに「キャラメルポップコーン!」とすぐさま答える。

キャラメルポップコーンと、柴田さんはコーラ、私はピーチソーダを持って、座席についた。

「甘ったるそう……」

キャラメルポップコーンを見て、呟いた柴田さん。もしかして、甘い物好きじゃなかったかな……?

柴田さんのお酒の飲みっぷりを思い出して、今さらながら後悔する。

「ご……」謝ろうとして、思いとどまる。嫌われる為には、これでよかったのか……?

柴田さんと会ってから十分程しか経っていないのに、いろいろ考えて疲れた……

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