不倫のルール
九月の終わりが近付いた頃、玲子さんから黒崎さんの異動の話を聞いた。

その後、うちに来た黒崎さん本人からも、異動の話を聞いた。

どこか安堵を感じながら「無理だよね」と、黒崎さんに言った。

今いる本社から、車で一時間はかかる営業所の所長となり、これまで通り自宅から通勤するのだ。

私と会う時間なんて、とれなくなるはず……

そう思ったけど、黒崎さんに笑顔で返された。

「今までも、これからも、繭子と無理をして会う事はないから、大丈夫」

“不倫相手”、“愛人”、“都合のいい女”……

黒崎さんにとって、私はどれ?……全部かな……

わかっていた事なのに、黒崎さんの言葉にダメージを受けている私。

その日の夕方になって「行けなくなった」と連絡がくる事も、一度や二度じゃなかった……

私が好きだから、黒崎さんがどう思っていてもいい──

そう思っていたはずなのに、「黒崎さんにとって、私はどんな存在?」そんな事ばかり考えていた。

木曜日の夜に黒崎さんと会い、金曜日の夜に柴田さんから連絡があって、土曜日に会った。

「何がしたい?」と訊いてくれた柴田さんに「スニーカーが見たいかも」と答えて、ショッピングモールに来た。

昨日スマホで話していた時も、そして今も……私は柴田さんの話を、上の空で聞いていた。

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