不倫のルール
結局、午後からの私は、別人のようにおとなしくなってしまった。

「午前中はしゃぎ過ぎて、ちょっと疲れたかも」

なんて言って、ごまかした。柴田さんには、変な心配をかけてしまった。「ごめんなさい」と心の中で謝る。

午後からは、のんびり園内を回って、四時過ぎには帰る事にした。

途中のサービスエリアで夕食をとり、八時半くらいに、待ち合わせ場所の公園の駐車場まで戻ってきた。

柴田さんが、私の車の隣に駐車した。シートベルトを外して、身体を運転席の柴田さんの方に向ける。

「お疲れさまでした!今日は、本当に楽しかったです。ありがとうございました!」

深く頭を下げた後、顔を上げてニコッと笑った。こうやって、柴田さんの顔をしっかりと見るのは恥ずかしい。

いったい、どうしてあんな事をしてしまったのか……柴田さんが気付いてなくて、本当によかった……

「じゃあ……」おやすみなさい、と続けようとしたのに「繭ちゃん」という柴田さんの呼びかけに、遮られてしまう。

「先週、元気がなかったから心配してた。今日は元気な繭ちゃんが見られて、よかったよ」

今日の遊園地は、私を元気付ける為だった……?

「ところで、ごほうび、もらっていい?」

「?はい、いいですよ」

“ごほうび”なんてちょっと可愛い響きに、深く考えずに頷いていた。

声を発する暇もなかった。柴田さんが私に近付いたと思うと、おでこに柔らかい感触があり、車内にリップ音が鳴った。

「っっ!!」

とっさにおでこを押さえて、柴田さんを見た。

< 89 / 122 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop