初恋フォルティッシモ
でも、何度か声をかけてみても、三島くんは返事をしない。
やっと顔を上げてくれたかと思えば、酔っぱらい独特の怪しい笑みを浮かべるだけ。
…あ、意識はあるのね。って当たり前か。
その表情は、まるで何かとんでもないことを考えているいたずらっ子のよう。
確か、前に少しだけ三島くんの家の場所を聞いたことがあるんだよなー。
でも詳しい場所とか本当に知らないし、今はどうしようもない。
「…家どこ?ってか歩ける?」
「…に、行きたい」
「え?」
一瞬、トイレかと思った。
けど、違った。
彼が行きたい場所は……
「…先輩ん家に行きたい」
「……え、先輩って」
「麻妃先輩の、マンションー」
いきなりそう言って、クスクスと笑いだす。
だけど、冗談なのかと思えばどうやら本気のようで、三島くんはもう一度口にした。
「先輩ってー、家どこなんすか」
「こ、この前言ったでしょ。ってかあたしのマンションはだめ!」
「ええー、なんで」
「散らかってるし、それに…もう遅いし!終電なくなっちゃうでしょ!」
だからダメ!
しかしあたしがそう言うと、三島くんが言った。
「…泊めてくれないんすか」
「!?」