初恋フォルティッシモ

ふいにそんな言葉が耳に飛び込んできて、その瞬間にバチっと目が合う。

一瞬びっくりしたけれど、彼は今ベロンベロンに酔っちゃってるんだからしたかない。

だからあたしは、平然を装って彼に言った。



「…な、なに言ってんの。別の人と結婚しちゃう人がさ。冗談やめてよ」

「?」

「あたし、こう見えて知ってるんだからね。三島くんはもう今日は自分のマンションに帰るのー」

「…けっこん?」

「…?」



だけどその時、不思議そうな彼の声が聞こえてきた。

その言葉に三島くんの方を見ると、彼は案の定首を傾げている。

真っ赤な顔をして、何のこと?って。


もー、可愛いのが憎い。



「とぼけないで。ユリナさんっていうんでしょ?三島くんの彼女」

「!」

「子供、出来たんだって?言ってくれればよかったのに。あたしと三島くんの仲なんだからさ」



…やばい。今、ちゃんと笑えてるかな?

あたしは泣きそうなのを堪えて、でも笑顔が歪んじゃってる気がして、三島くんに顔を背けた。

こんな姿は三島くんには見られたくない。


でもその瞬間、三島くんが言った。



「…ちょっと待って、下さい。なんか、先輩、俺言ってる意味がよく…」



理解出来ないんすけど。


そう言って、あたしの顔を覗き込む。

けどもう、言いたくない。

その言葉を口にするだけでショックだから。
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