初恋フォルティッシモ
思いもしなかった三島くんの言葉に、体が固まる。
声が出せなくなる。
ってか、何て言っていいのかわからないし頭の中が真っ白で。
「…っ」
笑って、上手に誤魔化せたらどれだけいいか。
っていうかそもそも聞き違いであってほしかったのに、三島くんはまた言葉を続けた。
「…その反応は、やっぱりそうだ」
「…?」
「びっくりしてますよね?
っつか、そりゃそうか。俺、今日ずっと先輩にこのことが言いたかったんすよ。渡辺部長とのこと。
だって俺、先輩のこと…すげー好きだし」
「…っ」
「…俺の、勘違いであってほしかったのに」
「…」
「何で、笑って、“何言ってんの”って、言ってくれないんすか」
三島くんはそう言うと、切なそうに笑って見せる。
ついさっきまで酔っぱらっていた三島くんが嘘みたい。
それに、嘘みたいに消えていく。さっきまでの、恋心の不安と悲しさと寂しさも。
だけど、代わりに込み上げるのは。
「…ね、先輩」
「…っ」
また違った不安。
冷や汗。
見えない三島くんの心が、怖い。
だけどあたしは、真っ白な頭の中で、やっと口を開いて三島くんに言った。