初恋フォルティッシモ
「…だったら、なに?」
「?」
「そうだよ。何で、三島くんがそんなこと知ってるの?誰かから聞いた?」
「…先輩?」
「確かにあたし、渡辺部長と周りに内緒で会ったりしてる。三島くんが思ってるよりも結構頻繁にね」
「…」
「予想以上のヒドイ女でしょ?あの頃とはもう違うんだよ。あたし三島くんのこと裏切ってたんだもん」
「…」
「だからほんとは…好きなんかじゃ、ない。三島くんのこと。あんなの嘘だよ。嘘嘘。ぜーんぶ、嘘」
ああ、今酔っぱらってんのはどっちだろう。ふいにわからなくなる。
本当はもちろん好きなのに、三島くん以外の男の人なんて見えないのに、どのクチがそんなこと言ってるの。
気がつけば目の前の三島くんは物凄く悲しそうな顔をしていて、ふいに言葉が途切れた。
…結局、自分のことが一番なのかな。
傷つきたくないから、嘘で自分を守ってしまう。
シアワセニナッテ。
すると、三島くんが言った。
「…本気で、言ってるんすか?」
「…うん」
嘘じゃない。
本当は大好き。
ずっと傍にいてほしいし、隣で笑っていてくれさえすれば、それだけであたしは幸せ。
なのにそれが言えない。
もどかしくって、泣きそうになる。
だけど今は泣いちゃだめだ。
だから嘘をまた重ねた。