スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
やがてバイクが緩やかに停車した。
瞑っていた目を薄く開く。どうやら信号待ちのようだ。

春木さんの腰に回していた両手を、この間だけでも解こうとした。

けれど
引っ込めかけたその手を今度は彼に掴まれ、強引に元の位置に戻された。



「……いいよ。このままで」



春木さんは前を向いたままそう言って
私の左手に、自分の左手を重ねた。



「……っ」



やわり、と握られた手を
私も握り返す。


触れたかった。
本当は、ずっと。



信号が変わるまで
私たちの手は繋がったままだった。
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