スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
誰かを好きになる事が
想いが届かない事が

こんなにも苦しいなんて知らなかった。


心臓があげる悲鳴が、あなたに伝わってしまわないか
そればかり気になって



「春木さん……」



再び走り出したバイクの音で、私の声はかき消される。
離された左手がまだ温かい。


溢れる涙が
風に乗って消える。


怖いからじゃない。
寒いからじゃない。


春木さんが愛しかった。

誰よりも愛しかった。



「好き……」



涙で滲む背中に
頭をくっつけて呟いた。
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