世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-
声のする方を見ると、ドアに寄りかかる坂瀬くんがいた。


「...坂瀬くん」

「いたのか、天馬」


青柳颯太も気づかなかったようで、少し驚いた表情をする。


「何の話してたの?もしかして、昨日の話?」


坂瀬くんは不自然に微笑んだ。
その目は、どこか少し冷めていた。


「...遊佐さん」

「な、何?」


名前を呼ばれて、少し緊張する。


「昨日のは、ただの喧嘩だよ。だからそんなに気にしないで」


優しい坂瀬くんの声に、少し切ない気持ちになる。


「でも、殴られてたし、たくさん酷いこと言われてたじゃん」


子どものような話し方になる。
坂瀬くんの言葉が、信じられなくて。


「俺がすっげぇ酷いことしたんだよ。ああ言われても、何されても仕方無いことしたんだよ。颯太、昨日はごめんな」

「...いや、俺も悪かった」


青柳颯太は坂瀬くんと目を合わさず、表情も変えず謝った。


「ほら、これで仲直り。ね、遊佐さん。心配しないで」


いつも以上に優しい坂瀬くんの声。
それが、私を突き放しているように聞こえた。
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