世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-
それから教室に帰って、先生に怒られて。


「俺が無くし物して、遊佐さんに無理矢理探して貰ってたんです。だから、遊佐さんのことは怒らないでやってください」


そんな青柳颯太の言葉を、私は横で俯いて聞いて。

どうしようもなく、自己犠牲な彼を。
私は、助けてあげられなくて。

結局先生はそれを信じて青柳颯太を怒った。

『そんなことに人を巻き込むな』
『お前は優等生なのに』
『期待外れなことをしてくれるな』

憎まれ口を叩くことで有名な先生の授業中に帰ってきてしまったため、その先生は青柳颯太にそう言った。

その言葉を何も言わず受け入れる青柳颯太は表情を崩すことなく俯いていた。

授業終了のチャイムがなり、長い長い説教が終わった。

青柳颯太は何事もなかったかのように席に戻る。

私は何がしたいんだろう。

坂瀬くんを好きになって、
翡翠をどこか真っ直ぐ見られなくて、
青柳颯太にあんな顔をさせて。


「何て顔してんだよ」


声のする方を見ると、そこには席に戻ったはずの青柳颯太がいた。


「馬鹿なくせに難しいこと考えてんじゃねーよ。それともなんだ?天馬に振り向いて貰う自信がねーのか?」


馬鹿にしたような笑みを向けてくる。


「化粧品の種類で迷ってんのか?それとも可愛い告白の仕方でも研究してんのか?」

「...うるさい」

「心配すんなよ。化粧なんて無駄に高いもの使わなくても、笑顔だけで充分だ」


いつだってそうだ。

いつだって、私を助けてくれるのは青柳颯太だ。


「...泣くなよ」

「アンタのせいでしょ...馬鹿」


でも今は、私のことなんか気にしてほしくないのに。
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