イレカワリ
☆☆☆

封筒の中身は現金だった。


それも、高校生が用意するには大変な金額だった。


あたしは歩の部屋のベッドに寝転がり、ぼんやりと天井を見上げていた。


『あの日』とは、純が歩からお金を受け取る日だったのだ。


『これでまた一か月間黙っておいてやるからな』


純のその言葉から考えると、月に一回、歩は純にお金を渡していることになる。


「……どうして?」


あたしは誰もいない部屋の中で呟いた。


純と歩はクラス内で一番仲がいい友達同士だ。


なのに、なんでお金を支払っているんだろう?


いや、仲がよさそうに見えて本当は違うのかもしれない。


クラスで見せて言う顔は表面上のもので、もっと複雑な関係が隠されているのかもしれない。


あたしはベッドの上で寝返りを打った。


純は歩の弱味を握っている。


だから歩は純から離れる事ができず、毎月のお金もキッチリ支払ってる。


そう考えるのが一番自然だった。


お金を取られてしまうほどの弱味って、一体なに?


あたしは考えた。


けれど考えただけでわかるはずもなく、気が付けば深い眠りについていたのだった。
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