イレカワリ
やっぱり、そうなんだ?


歩は海の事を覚えている。


だけど、忘れたふりをしていたのだ。


家族にまで、嘘をついている。


それが普通じゃない事くらい、真っ白な頭でも理解できた。


「お前が殺したんだぞ、海の事」


純がなんの感情もこもっていない声でそう言った。


歩が……殺した……?


徐々にその言葉が頭に入ってきて、あたしは目を見開いた。


純をジッと見つめる。


「ころ……した……?」


「はぁ? 俺の前でまでしらばっくれるのかよ」


純は呆れたような声でそう言った。


歩は海を殺した。


その事を純は知っている。


だから純は毎月歩からお金を奪っている。


歩が海の事を忘れたふりをしているのは、その方が怪しまれないから……。


世界が真っ暗闇に包まれた。
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