イレカワリ
車の音も風の音も純の声も聞こえなくなった。


歩が海を殺した。


歩は……人殺し?


雷があたしの心臓を貫くような衝撃だった。


あたしは無意識の内に石段を駆け上がりはじめていた。


下の方から純の声が聞こえる。


息が切れて、足が重たい。


それでもあたしは立ち止まらなかった。


今すぐ家に帰りたい。


歩は人殺しなんかじゃない。


それを証明するものを見つけ出したい。


その一心で、走ったのだった……。
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