トンネルを抜けるまで

 父こと蛇王様に、半年で此処での役割を全てこなすと言ってから半年。今の私はと言うと、リックと共にトンネルの前の地点の木陰に隠れていた。
「まさか、本当に半年でやっちゃうなんて」
 私、こう見えても短期間集中型なのよ。やる時はやるってこと。私なんかには無理だって思ってた? その割に、私がお腹すかせて寝そべってた時、こっそり料理持ってきてくれたし、染物、料理、鍛冶、色々教えてくれたじゃない?
「半年じゃそれくらいしないと絶対無理だし、困るから。半年で、出来てもらわないと……」
 リックは視線を逸らした。全く素直じゃないんだから、難しい年頃ねぇ。
 あ、ちょっと。リックの肩を強引に掴んでくっついてしゃがみこむ。
「な、何」
 慌ててこっちを見るリックに、私はそっと手を伸ばしてリックの視線を手の方へと誘導させた。
 監視者になって初のお客様だ。ありゃ、生と死を彷徨ってるのにお客様ってのはちょっと失礼かしら。リックから、此処へ来る人は大概ペアだって聞いたんだけど……ちょっと此処からじゃ見えづらいな。もう少しこっち来てくれないかな。そう思ってたら、思いが読み取られた様に、背の高い金髪の男性が此方へ近寄ってきた。
「ちょっと、こっち来る」
 ヒヤヒヤして、思わずリックをぬいぐるみの様にギュッと抱きしめた。どんどんその人物は近寄ってきて、ついには青々とした草むらを掻き分けてきた。
「……エル!」
 そんな呼び方、一人しかしない。おかしいことに、その一人が目の前にいる。サラサラとした金髪、黒い縁の眼鏡、口元と目元のホクロ。其処にいるのは、本来此処とは確実に無縁な人。
 ……ダニエル……どうして。
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