トンネルを抜けるまで

「……え、どうして私のこと」
 ダニエルです。以前、何度かお会いした。
「ダニエル? 本当なの?」
 僕はセリシアの手を引き、前に明りのあった数メートル先まで戻った。やっとぼんやりとした明りの下に来て、お互いの顔が見えるようになる。金色の髪を少量後ろで束ね、それを三つ編みにしている。残った髪は腰までウェーブがかかっている。如何にもお嬢様と言った格好で、目は心の中を表現している様な優しげなたれ目だ。僕の顔を見た途端、セリシアは満面の笑みを見せ、力が抜けた様にその場にしゃがみこんだ。
「ダニエル……会えて良かった」
 彼女を見下さない様に僕もしゃがみつつ、辺りを見渡す。すると、エルとリックは手を振ってトンネルを後戻りして行った。少々物悲しい。
「そう言えばダニエル、さっきまで女性の声とか聞こえてたけど、女性は?」
 先に出口へ抜けたみたいだ。
「出口?」
 このトンネルの先へ行くと、出口があって、其処を抜けると僕達は元の居場所に帰れるそうだよ。
「そうなの? だったら早く帰りましょう!」
 まぁそう生き急がなくとも。ゆっくり話でもしていこう。前会った時は、親が何かとくっついてなかなか話せなかったし。
 僕が提案すると、セシリアは子供の様に飛び跳ねてウェーブのかかった髪を上下に揺らした。どうやら嬉しいらしい。
「うん、そうしましょう。私、ダニエルのこと、もっと知りたかったの! 私も、ダニエルに知ってほしいし、まさかダニエルからそう言ってもらえるなんて思って無かった。嬉しいです」
 僕も、まさかこんなことを言うとは思っても無かった。此処に来るまで、彼女に嫌になるほど説教された所為だろう。余程嬉しかったのか、今度は彼女が僕の手を引き、意気揚々と歩きだした。彼女、今の自分の状況を分かっているのだろうか……。
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