〇年後、微笑っていられるなら〇〇と。

はっきりと心が定まっている訳ではない。
まだ…この期に及んで揺れている。迷いが無い訳ではない。
もしかしたら、取り返しのつかない、とんでもない事を俺はしようとしているのかも知れない。

後悔するかも知れない。あるのは勢いだけだ。

何から話したら良いだろう。
得意先との酒の場でも無ければ、永年の友でも無い。
言葉遣いを気にすると上手く話せるだろうか。

今から言う俺の言葉。
上手く読み取ってもらえるだろうか。
ふぅ。

「あの…、結論から話すと言うより、少し、前置きのような話を聞いてもらえますか?」

「はい、どうぞ。ご自分で納得のいくよう、話をされてください」

「はい。
私と京は高校の同級生です。…でしたか、すみません」

緊張する。下手な商談より緊張する。ふぅ。

「一年の時、京から告白され付き合い始めました。三年の卒業と同時に京からの言葉で終わりになりました。
それから、ほぼ10年経ちました。
夏頃から付き合い始めました。
それも京から言ってきました」

「聞きたい事もありますが、吉澤さんの話が終わってからにします。
どうぞ続けてください」

頷いて続けた。

「京は私に会いに来るまで、誰とも付き合っていないと言いました。
誰からも声を掛けてもらえなかったと言って。
独りが寂しくなったから…気心が知れている私ならと…甘えたと言いました」
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