〇年後、微笑っていられるなら〇〇と。
俺が忘れさせてやる、なんて言って、強引に抱く事なんて出来ない。
そんな、見境の無い事は出来ない。
それは酷い目にあった場合に限り許されるような気がした。
それに、自分に少しでも思いを寄せてくれている確信が無いと出来ない事。
ドラマでは無い。
現実の男は中々強気に出られないものだ。
「コートと事務服は脱がせるよ、京」
聞こえていなくても、返事が無くても、声を掛けながら着替えさせた。
俺のトレーナーは京には大きいから丁度いいだろう。
布団を掛け、なるべく見ないようにして続けた。
こんな時だから、お腹は空かないだろうが。
それでも目を覚ましたら何かあった方がいいだろう。
コンビニは近い。
5分もかからない。
行ってこよう。
サンドイッチ、アイスクリーム、スイーツ、ペットボトルの飲み物、取り敢えず目に留まるもの全てを片っ端からカゴに入れた。
彼女に?優しいわね、なんて、レジのおばちゃんに声を掛けられた。
…勝手なものだ。
あ、…俺の顔、京が待ってると思うと、どこかで少し緩んでいたのかも知れないな。…浅はかだな。最低だ。
帰って来て寝室を覗いた。
何も変わり無かった。
京は居た。
相変わらず昏々と眠り続けていた。
取り敢えず買って来た物は冷蔵庫にしまった。