〇年後、微笑っていられるなら〇〇と。
「京…隣に寝かせてくれ。
一人暮らしで予備の布団が無いんだ。
ごめんな。
びっくりするなよ?」
京の首の下に腕を入れ、抱き寄せるようにした。
それでも二人は場所を取る。
シングルなんかにせず、せめてセミダブルくらいにしておけば良かったな。
「こうでもしないとふとんの端が上がってしまうんだ」
返事は無くても、俺はずっと声に出し京に話し掛けた。する事の言い訳を言い続けた。
「京、もう少し抱きしめるぞ」
身体の向きを横にして正面から抱いた。
これでなんとか、なりそうだ。
「…なあ、京?俺はな、京が入社して来た時から好きだったんだ…。
真新しい制服姿が初々しくて、可愛かったよ。
俺はその時、京に堕ちたんだ。
その前の年も新入社員は居たと思うけど、ちっとも何とも思わなかった。
その後もずっとそうだ。
一度この子だと思ったら、他の子なんて気にもならないもんなんだよ。
京はさ、仕事の飲み込みは早くて出来てるみたいなのに、どこかがちょっとずつ違ってて、微妙に叱られて、あの頃はメソメソ泣いてたよな、人目につかないところで。
最初は重要さが解らないから、大変な事したって、凄い思うんだよな。
俺も初めはそうだった。
だけど、そのうち、大した事無い事で泣いてたんだって解るんだよな。
それからは免疫が出来てるからへっちゃらだよな。
そうやって仕事を覚えて、会社にも慣れていくんだよな」