冷たい彼の情愛。
 
ふと縁が私から離れ見つめてきて、私はそれに応えるように縁のふわりとした髪の毛に触れ、頭を撫でた。

触れることができるのが嬉しくて、縁のふわっとした笑顔を見れるのが嬉しくて、頬が緩んでしまう。

好きという気持ちが溢れ出しそう……。


「ねぇ、咲世」

「うん?」

「俺のこと、好き?」

「……うん」

「ダーメ。ちゃんと言って?」

「……好きだよ。縁」

「……うん」


私の伝えた想いに縁が嬉しそうに笑ってくれたことはすごく嬉しい。

でも……縁はそれ以上、言葉を発しようとしない。


「……縁って、ズルいよね」


私にだけ言わせるなんて。

私だって縁の想いを聞きたいのに……。


「ん? 何が?」


ほら。縁は愉しそうな笑顔を浮かべて、誤魔化すように首を傾げるんだ。

私をからかう時の笑顔も嫌いじゃないけど、悔しい。

でもわざわざ聞くのも気恥ずかしいし、何よりも悔しくて、何も言えないまま私はついむぅと頬を膨らませてしまう。


「……いいの。気にしないで、ひゃっ?」

「咲ー世っ」

「っ、」


拗ねてしまった私がぷいっと顔をそらそうとした時、縁が私の体を力強く抱き締めてきた。

 
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