可愛い弟の為に
身内だけの式…と言っても。
人数が多い。
これだけで100人ちょっと。
本当に疲れるとしか言いようがない。
式の最中、寝てやろうかと思うくらい、だるくて…。

桃子さんは誓いの言葉とかは言っていたけど、他は無言。

淡々と時が過ぎるのを待っていた。



更に昼からの披露宴…。
大量の医師が集まる。
学会か、この披露宴は。

ウェディングドレスに着替えた桃子さんは…。
まだ2回しか会っていない人に言うのはオカシイけど…。
可愛かった。

主賓のあいさつも…こんなに人が多ければ短いかと思いきや。
長っ!!

頼むから早くしてくれ。
しかも僕、知らない人だしな。
父さんの知り合いだろうけど。

ウエディングケーキ入刀後、乾杯の音頭をウチの病院の副院長がしてくれた。
会食、歓談と進んでいったときに軽く事件が起こる。
ウチの内科先輩医師軍団が。
キスのオーダーしてきた。

キスどころか手もつないだことがないのに。

桃子さんの顔が引きつる。

「まだ、新婦は18歳なので、公衆の面前でそんな事出来ません。
セクハラですよ、先輩方」

僕はそう返してみたけれど、会場全体がもう、やってしまえ!という雰囲気に包まれる。
全員、シメテやりたい。

仕方ない、昨日考えた方法で切り抜けよう。

「桃子さん、僕の言うとおりに体を動かしてください、いいですね?」

桃子さんにそう耳打ちすると

「僕の右手を左手で軽く握ってください」

向き合って僕はみんなからは見えない左手でそっと桃子さんの腰に手を当てる。
それだけで声が上がるのだからどうにかしてる、このドクター軍団。
どんなに欲求不満なのか。

「その手を桃子さん主導で桃子さんの頬あたりの高さまで持って行って」

少し無理な体勢。
ふらつきそうになる桃子さんを僕の左手で引き寄せる。

「ちょっとごめんなさい」

僕が少し首を傾けて桃子さんの唇寸前で止める。

すぐに離れた。

「え~!!口と口でちゃんとしたか見えてない!!」

「見えなかったですか、残念。もうこれ以上はナシです」



とりあえず、ここは切り抜けてやったぜ!!



チラッと見た親族の席で透が俯いてクスクス笑っている。
昨日、透相手に練習したからな。
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