可愛い弟の為に
通話を終えると桃ちゃんが後ろに立っていて思わず声を上げた。

「いやあ、ラブラブですねえ、透さんと至さん」

桃ちゃん、変な表現しないで下さいよ。

「至さんのブラコン度合は変態並み…透さん、ドン引きじゃない?」

ブラコンとか変態とか…。
言いたい放題だな。

「桃ちゃん、怪しいくらいにニヤニヤしてますよ」

「BL書けそう」

…はあ?

「何それ?」

「ヲタクの透さんなら絶対知ってる~。教えてもらったら?」

桃ちゃんは漫画家目指していた透のことを僕の前では時々『ヲタク』と呼ぶ。
本人目の前にして一回言ってみろ!と思うけど。

「多分、それを聞いたら透、キレるでしょ?」

「キレるも何も至さんが一生、透さんに変態扱いにされるかな」

そんな怖いことは致しません。
なんとなく、BLの意味が判ったぞ。

「桃ちゃんの僕達兄弟に対する想像力のほうが変態だと思います」

そう言って僕は人差し指で桃ちゃんの額を突いた。

「桃ちゃん、僕と透の変な想像をするより、僕と楽しいことをしません?」

今度は僕が仕掛ける。

「え~…」

お、そう言いつつも大人しく僕の所へ寄って来た。
なんだ、透との長電話にヤキモチを焼いていたのか。

僕は桃ちゃんを抱きしめる。

子供っぽく見えるけど、いざという時には頼りになるし、何よりこういう所が可愛いし。
僕は一生、この人を大切にしようと思った。
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