君が好きになるまで、好きでいていいですか?
「あいつに会ったのも今日6年ぶりだったし」
そう言いながら繋がれた手を少しキュッと握った
「なんか、いろいろ複雑なんですね…………
ええっと、今日はなんで?」
6年ぶりに元カレに会いに来る理由は?
今カレの後輩に会いに?
「それ」
テーブルの上にある1つの鍵に目をやった
「鍵?」
「同棲してた時の合鍵、6年前に別れた時いろいろあって、返しそびれてたんだ」
「……………」
あぁ、へぇ………同棲してたんだぁ
「万由?」
そっかぁ、ここって一人暮らしにしては広いと思ったげど…………一緒に棲んでたんだ
一瞬、部屋に視線を向けたのを、後藤に覗き込まれた
また、万由の手を覆う後藤の大きな手に少し力が込められた
「今はもう、ただの幼馴染みだよ。まだ何か話はあったみたいだけど、この部屋に勝手に入れるつもりもない。
それにあいつは今、先輩の彼女だし。これからも会う事はあるけど、でも俺とは完全に終わってるから…………」
「え……」
顔を上げれば後藤が真面目な顔してそう言った
「……………」
あ、そっかぁ
こうして手を繋いでると、この人がちゃんと真剣に言ってるって事が分かるんだ………
私、そんなに不安そうな顔してたのかなぁ
そう思いながら今度はちゃんと、後藤に笑顔を向けた
「はい。分かってます」