君が好きになるまで、好きでいていいですか?

「佳樹さん、どうしてあの子なの?
だって昔はあんなに優しくしてくれたのに……」


「………ごめん、理屈じゃないんだ。俺は君を好きになる事はないよ」


「……………」

薫の声を遮って頭を下げると、カウンターにお金を置いて席を立った後藤


「今日、確か歩美ちゃんと飲みに行ってるはずだよ万由ちゃん。そんな話してたから」


帰ろうとする後藤に、浅野が手を振りながら声を掛ける

一瞬ピタリと止まり半分顔を浅野に向けた


「……………どうも」


バツが悪そうにそう言って出て行った後藤







「私……………なんで由哉さんに言われたのと同じ言葉で振られるの?」


浅野の部屋を一花が出て行った時、今後藤が言ったのと同じ事を言われた薫


『一花を好きなのは理屈じゃない。だから薫を好きになることはこの先もないよ』

後藤より強い口調でそう言われたあの時、

実は小さい頃からずっと憧れていた年上の従兄弟に振られた


でも、その後後藤から訊いた浅野に一花の流産の話を訊いて、さすがに薫も謝りたくて後藤に一花の行方を聞いたが、教えてくれなかった


結局、そのまま失恋した薫の愚痴に付き合ってくれた後藤
もちろん後藤が同情と、山吹常務の娘として優しくしてくれている事は、分かっていた

それでも、朝まで何度か24時間ファミレスで愚痴に付き合ってくれた後藤を、好きにならない訳がなかった


「でもなんだかんだ言って、ムロイの副社長との交際をOKしたんだろ?」


後藤の出て行ったのを見ながら口を尖らせる薫の顔を覗き込む浅野


「いいんじゃないか?
向こうはお前にゾッコンだって聞いたし、それに男を知らない堅物のお前にはお似合いだと思うがなぁ」


口角を上げてそう言う浅野に目を叛ける薫


「……………煩い、それはほっといて」



                   
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