君が好きになるまで、好きでいていいですか?
その手を軽く退けると、彼女の顔があった
少し心配そうに眉を歪め、頭を傾げていた
「そうなんですか? でもやっぱり、こんなところで眠ってしまうと、風邪引きますよ」
手が離れていった額が、今度は寂しく思えた
「………………」
そして………
既に俺はそう言った彼女に、心が釘付けになっていた
その日から、何となく彼女を探す日々が始まった
偶然にも、大学からの知り合いだった浅野先輩の部署の企画部事務だったことから、さりげなく飲みに行く時、彼女の話を聞いた
「結構、身持ち硬い子だよ。仕事も出来るし、素直だし、なんたってかわいいから狙ってる奴多いんだけど、
初めから彼氏オンリーって感じで、食事に誘っても断られるらしいよ。
なに、お前も沢村万由ちゃん狙い? 案外ベタだな」
「彼氏持ち………」
一度は諦めようと思ったが、その時初めて自分の諦めの悪さを自覚した
『写メなんて、見なきゃよかった……』
彼女の呟いた言葉と、溜め息
あの時の、様子だけで、もしかしたら上手くいって無いんじゃないかなんて、思う始末
だからと言って、何もアクションを起こさないまま、一年以上がたった
30歳にもなって、中学生みたいな片想いなんて、実際あり得ねぇ…………
恋愛に臆病になっている自分を奮い起たせ
決死の覚悟で告白を試みた
はぁっ……………
その後はまるでジェットコースターの様に心が上がったり下がったり
ますます彼女から目が離せなくなっていた
結局……………振り向かす処か、振られて撃沈とか、どうした俺!!
『お前は、俺と違って人の物に手が出せない体育会系だもんなぁ』
俺の恋愛おんちは、誰のせいだよっ!!
「沢村さん、今 幸せ?」
ヘタレなりに聞くだけ聞いた
「あ、はいっ」
だよなぁ…………
それはもう、俺が入る隙も無さそうな笑顔で答えられた。
***