君が好きになるまで、好きでいていいですか?



「アシスト………ですか?」

仕事の作業が一段落ついた時、浅野主任に話をしようかと、部署内にあるミーティングルームに呼び出された。


「そう、普通ならもう少し後くらいからなんだけど、万由ちゃん優秀だから」


「……今やってる作業と、違うんですか?」


万由が首を傾げる

今までやっている事も、企画部の会議資料や、頼まれて指示された図面を起こしたりと、そうゆうのをアシストって言うんじゃなかったのかな?と思う

「一緒と言えば一緒なんだけど、万由ちゃんが今までやっていたのは、1つの案件の一部で作業的に単発もの、一応歩美ちゃんから作業内容を分けられてる状態なんだ。
でも、これからは一つの案件を始めから最後まで携わっていくアシスト。
要は、いち企画部社員にアシスタントとして、一緒に物を作る手伝いって事。」


あ………そう言えばそんな人もここには何人かいる、けどそれって企画事務歴5年くらいの御姉様たちじゃないか私はまだ丸2年だ


「万由ちゃんの場合、ちょっと考え方が違って、一般職からの総合職に関する制定は知ってる?」

「………?はい」

一般職として3年仕事すると、一応総合職としての試験が受けられる
勿論、その3年間の出勤状況や勤務態度、仕事の実積や上司からの評価などを踏まえて、簡単に受けられる試験ではない。


「来年の3月、その試験受けてみる気ない?その為の実積作り的な」


「はぁ?」

思わず出てきた間の抜けた返事


「もちろん、今すぐに決める事じゃないし、それを目標に仕事してみないかってこと」


「はぁっ…………」

総合職って、スーツ着て会議にでて、残業してるイメージなんですけど…………


「これからの作業は少し考えたり調べたりする事が多くなるけど、残業する訳じゃないから。うちは、基本的に事務の子に残業はNGだからね。あくまでもアシスタントだから大丈夫、ちょっとしたランクアップって事で」


ちょっと考え込みながら「はい」と返事をすると、浅野主任がいつもの優しい笑顔を向けた

「総合職って言うと身構えちゃうかな、生活環境や交流なんかも変わってくるからね。女の子は結婚や出産、育児なんかも考えなきゃいけないし。まだ先の事だから、ゆっくり考えてよ。人それぞれだから」


いまいちピンとこないまま、話は終わって席を立つ。「失礼します」と一礼すると、もう一言


「万由ちゃんのことだから、当然歩美ちゃんに相談すると思うけど、歩美ちゃんは歩美ちゃんだから、まずは自分で考えようね。」



そう言って浅野主任は、座ったまま手のひらをヒラヒラと揺らしていた。

< 48 / 333 >

この作品をシェア

pagetop