君が好きになるまで、好きでいていいですか?
「……………」
固まったままの万由に、後藤がゆっくりまた口を開いた
「捨てられない訳じゃなくて、ただ無頓着だっただけだと思うよ。」
「へっ?」
首を傾げる万由
「さっきの元カノの物って話。
大概の男は恋愛してても自分の生活習慣を変えないもんなんだよ。
だから改めて言われて初めて気がついて、今頃片付けてるんじゃない?」
「あ…………」
「確か沢村さんの彼って幼馴染みなんだったよねぇ。だったら尚更、付き合いが長い分お互いに解り合ってるって思いがちだけど、溜め込んでかえって言わなきゃ解らないもんだよ、俺の経験上」
「経験上って、課長の?」
「そっ、昔俺も幼馴染みと付き合ってたから」
そうなんだ…………ってじゃあ別れたってこと?
「……………」
いつの間にか車は、ハザードランプをつけて道の路肩に停められていた
5階建てのワンルームマンション
雨もいつからか、小降りになっていた。
「ありがとうございました。」
一応助手席から深々と頭を下げて、シートベルを外しドアに手を掛けた
「沢村さん」
もう一度呼び止められて、返事もしないで後藤の方に向き直した
「会社では、なるべく人のいるところで喋りかけない様にするよ。俺と関わると君が余りよく思われないみたいだから」
あ…………知ってたんだ、あの勝手な噂話
え、もしかしてこの前無視したのもそのせい?
万由は、黙ってもう一度会釈して後藤の車から降りた
「じゃあ、月曜日に」と、軽く運転席から手を振って車は、走り去って行った。