君が好きになるまで、好きでいていいですか?
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「…………タクシーで、か。」
万由との電話を切って、そう呟く
雨が降ってきたのに気がついたのは、万由が部屋を出て行って、少したった後だった。
急いで俺は傘を持って、万由を追いかけた。雨は結構激しく降ってきていたからどこかで雨宿りをしているだろう、と思った。
こんな日に駅以外でタクシーが通るはずがない。
だが…………そこで見たのは、あの男の車に自分から乗り込む万由の姿だった。
「…………」
隣に住んでた2歳下の幼馴染みの万由
弟と、二人姉弟の四人家族の沢村家は、うちと違って賑やかで仲のいい家族だった。
一週間に何度も家に帰って来ない父親と、それを黙って黙認して、仕事に逃げる母親
それが俺の家族だった。
ただ唯一、母親と仲が良かった万由の母親が、俺をその誰も居ない廃れた家から救いだしてくれた。
そして、俺を招き入れてくれた事であの壊れた家族でも、グレることない自分でいられた。
幼馴染みだった万由は、ずっと守るべき存在だった。
小さい頃から引っ込み思案だった彼女を、誰の目にもさらさない様に、エスカレート制の女子高へ進め、常に見守ってきたんだ。
実際は学力も高かった彼女だが、俺に信用と信頼をおいて従ってくれた。
いつか、俺が沢村家の家族になるために
笑いの堪えないあんな家庭を作る夢見て
経てた俺の計画だった。