君が好きになるまで、好きでいていいですか?


姉御肌で人当たりがいい和音とは、入社当時から気が合った

もっとも、誰にでも愛想がいい彼女は会社ではそこそこマドンナ的存在だった。
建築会社といったまだ男社会が根強いところで媚びない和音に同僚として、好感を持っていた。

でも、俺と彼女が気が合ってたのはそれだけじゃ、なかった。


「ねぇ、宮下君は兄弟とかいるの?」

飲み会の騒然とする中で何気に聞かれた。
普段なら、自分の家族の話なんかしないが、その日は何と無く開放的だったのか、少し冗談ぽく話した。

「兄弟かぁ、自分的には一人っ子なんだけど、親父方に1人弟がいる。まあ、その子が4歳になって初めて存在知った弟なんだけどね。」

こんな言い方で意味が分かるだろうか。
そう思いながら心のない笑顔を向けた

当然引くだろうと思ったのに………


「ははははっ、分かる分かる。あたしなんかぁ、今何人弟や妹がいるか分かんないんだもん。両親ともどっかで違う家庭作っちゃってるからさぁ。」

いきなり似たような暴露話がでてきて、面をくらったが


「…………お前、飲みすぎだろ。椎名」


「いやいや、ビックリ。あたしやっぱり宮下君って同じ匂いがするって思ってたんだぁ」


少し様子がおかしい…………
一瞬、昔の俺と重なる様な自暴自棄に笑う彼女を見て溜め息をついた

「会ったんだろ最近、どっちかの親に……」


「…………」

ピタリと和音の笑い顔が消えた

甘えられない

そんな境遇がお互いを引き寄せた



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