君が好きになるまで、好きでいていいですか?
固まったまま、俯くことしか出来ない万由
「やめよう………」
「えっ……」
「この話は終わり。『お互い何もなかった』だろ? チャラにしよう」
もう既に駅が目の前で、向きを変えて乗る電車の改札口の方まで歩きだす
チャラ? お互いに?
「慧ちゃん………でもっ…………」
本当に和音さんの事は何にもないの?
「万由っ」
後ろにいる万由を肩越しに見下げられて、
一瞬、いつもより低い慧斗の声色にビクリッとした
「この話を全部なしにしたいのは、万由の方だろ?」
お互いにハッキリさせない方がいいの…………?
慧ちゃんも疑ってるって事?
「……………………うん…わかった」
慧ちゃんっと手を伸ばしたけど、それと同時に彼の携帯がなった。
もう、私に躊躇わないで電話に出るんだ
携帯を耳に充てたままの慧斗に、笑顔を見せて手を振ってから改札口に向かった